暗闇に浮かんだオレンジ色の光点。淡々と続くその点の線に、真っ赤なテールライトが浮かぶ。時折見えるウインカーの黄色が混じり合い、ぼんやりとした視界に光のグラデーションを描き出す。午前2時。真夜中のハイウェイ。東京から博多へ。南下する、ひたすら。
　この風景の中で今までどれだけの曲を書いて来たのか......そんな事がふと脳裏をよぎる。思考を巡らすのに適した環境は色々あって人それぞれでもあると思うが、俺にとってはこれも集中力が高まるシチュエーションのひとつだ。ただ今はマネージャーのアキラと番長の笑い声で、集中力の欠片もなくなっているが。
　名古屋、東京と出た「Aggressive Dogs aka UZI-ONE ＆ Nichiel's Japan Tour 2012」のイベントもあと1会場、博多のみとなった。他バンドのツアーでゲストで出るという形はかなりレアだが、それにしても今回の東京はアウェー感が漂っていた。
　ワンマンでやるようになってから、イベント出演自体が多くない事もあり、客のノリが悪いのはあってもアウェー感を感じたライブは、過去にそんなに多くない。俺個人としては78、79年辺りの頃の......その頃はバンドうんぬんかんぬん以前に、シーンなんて存在せず、パンクをやる事自体がアウェーだった......10代の頃のやんちゃな気分に戻って、この孤独感を妙に嬉しく感じたりもしたが。
　ライブ後、関係者の1人に「今日楽しそうでしたね。客受けが悪い時ほどハイテンション。とことんマイナー志向だと感じましたよ。」と言われた。そいつ的には、スタークラブは四面楚歌な状態の時こそ最大の魅力を出すバンドらしいので、こういったライブこそ最高‼みたいな賛辞を送ったつもりだ。が、まあ仮にバンドの本質がそうだとしても取り巻く状況で考えれば、それが良い事とも言えないので、難しいところだ。
　アキラと番長の会話はまだ弾んでいる。何を話してるのか訊ねたら、人間性についてからオカルトに宇宙、女......「でも話に中身はないですよ。将棋で例えればお互いに歩しか動かしてないみたいな内容です」と2人が笑って答えた。中身がどうであれ、楽しいのが1番だろう。
　ドライブインに入った。三重県長島。遊園地があるところだ。ドライバーがアキラに代わる。「今夜の博多ライブはアウェーかな？」と訊きながら考える。ホームにアウェー、サッカーか。つくづくロックもスポーツだな。「イベンターにデッドロックの長尾くんが絡んでますよね？だったらホームゲームにするでしょう！」、そう言ってアキラがエンジンをかけた。まあ実際にはどっちでもいい事だ。ライブが始まってしまえば、どうせ楽しむのだから。

　by HIKAGE